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明治末期に流行した「ハイカラ節(ハイカラソング)」がありました。神長瞭月が歌ったものです。
ゴールドメガネのハイカラは
都の西の目白台
女子大学の女学生
片手にバイロン、ゲーテの詩
口には唱える自然主義
早稲田の稲穂がサーラサラ
魔風恋風サーラサラと
天女の如くささやくは
青葉隠れの上野山
音楽学校の女学生
片手に下げたるバイオリン
奏る曲は春の夢
離れ小島か須磨の曲
五尺男子(おのこ)の袖絞る
星かとまどうリットルレディー
我が日本に隠れなき
学習院のスクールガール
指にはダイヤ照り添えて
歩む姿は谷の百合
髪には気高き花の精
秋のすすきの
雨の眉毛の愛らしさ
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独り野に咲く白菊か
都離し渋谷村
青山学院のスチューデント
歌う讃美歌声清く
花のかんばせ月の眉
軽き口元誰ために
清きけはいのなつかしや
歩みゆかしく行き交うは
やさしき君を恋し川
跡見女学校のスクールガール
背に垂れる黒髪に
挿したるリボンがヒーラヒラ
紫袴がサーラサラ
春の胡蝶のたわむれか
カラカラカラと出てくるは
ニキビ盛りの女学生ヒーラヒラ
ホワイト肩掛けに長袋
辞世遅れし束髪で
金魚のようにチョロチョロと
大きなお尻を振り回し
あれでラブあるかと思えば
あらおかし(以下省略)
この歌の「ハイカラ」とは、明治期の流行語で、国会などで演説をする代議士や弁士が、身につけているシャツの襟が「ハイカラー/Hight Collar」だったので、西洋風をまねたり、流行を追ったり、新しがったりする人を、〈ハイカラさん〉と呼ぶ様になったそうです。
家内は、高校を卒業したら、この歌で歌われている〈渋谷村の青山女学校(青山学院大学)〉に進学したかったのだそうですが、それが家庭事情で叶わず、1年間働いて、東京都の奨学金を受けて、別の学校で学んだのです。結婚だって、家内には夢があったのですが、結局は〈私〉になってしまったのです。
子育てが終わった頃に、娘時代の夢を果たすべく、渋谷村の学校に入学を、私は家内に勧めたのですが、笑うだけで、真面目に受け止めてくれませんでした。非常事態宣言の渦中、夢や計画が停滞したり、失われたり、思い通りにならないのですが、とくに若いみなさんは、大変な時期でしょう。人生って悲喜交交(こもごも)、様々に人は、天からの配剤を選んで生きて今があるわけです。
夢は夢で終わっても、理想や幻はそれで終わっても、強く柔軟な心が培われる時としていただきたいなって、思うこの頃です。
(大正時代の渋谷・東横線の駅です)
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